夜明けの図書室・別館

実存的・自己理解のための凪を

冬枯れの街路樹が落とす長い陰影のなか、一言も発することなく、ただ肩を並べて冷たい...

冬枯れの街路樹が落とす長い陰影のなか、一言も発することなく、ただ肩を並べて冷たいアスファルトの道を歩き続けていた、ある踏切の帰り道。

ガタゴトと響く電車の金属音と、どこか冷たい鉄の匂いが風に乗って皮膚を撫でるなか、私は相手の絶望をどうにかして消し去ってあげたいと胸を焦がしていた。

けれど、私の身体感覚は喉の奥がキュッと狭くなり、他人の課題を肩代わりしようとする Doing の空回りに悲鳴を上げていたのかもしれない。

精神科医フランクルが深淵の底で見出した通り、私たちはどれほど願っても、他人の固有の運命を代わりに背負いことなど絶対にできないのだ。

私たちができる唯一の気高い営みとは、その人が自らの不揃いな運命と対峙し、「どう生きるか」という問いに自らの足で応える背中を、静かに、ただ隣で見守ること。

相手をコントロールしようとする一切の操作の手をそっと地面に下ろし、自立のスペース(空間)を開く大人の境界線の引き方。

「私は私、この人はこの人」と、冷たい水で両手を洗い流すように、実存的な主権を本来の持ち主へと完全にお返しする知恵。

その覚悟がお腹の底にどっしりとした安定感をもたらしたとき、張り詰めていた筋肉は芯から心地よくほどけていく。

暗闇のなかでどちらに伸びるか知っているひまわりの種のように、相手の実現化傾向を信じてただ佇む凪の時間がそこにある。

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いつから、私たちは…
自分の足音が聞こえないほど
騒がしい場所を歩いてきたのだろう ──
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静かに自分と向き合う『夜明けの図書室』